二人のMVP
2012年07月21日
2万5612人が詰めかけた松山の夢舞台でMVPの賞金300万円を手にしたマエケンに大きな拍手が送られた。その隣にはルーキーにして敢闘賞に選出された野村祐輔。セ・リーグ防御率1位、2位の両右腕がパ・リーグの強打者を相手に改めてその力を証明して見せた。
2年前、全ポジション最多票を集めたマエケンは、第1戦の福岡ヤフードームで先発した。結果は2回パーフェクト。ダルビッシュ、和田らを押しのけて「ベストピッチャー賞」を獲得した。だが、あの時は「賞はオマケみたいなもの」ときらびやかな世界を経験することの意義を強調した。
今回は違う。「オールスターを同世代と共に盛り上げたい」とスター軍団の中でも中心的存在としてその投球を披露することを誓っていた。田中、塩見、吉川、斎藤、それに坂本。1988年生まれの同世代の仲間たちのことも意識した。「最近なかなか出ていない150キロ」にも挑戦するつもりでいた。
初回、聖澤、角中をセカンドゴロに打ち取り、前回も球宴で対戦した中島はストレートで3球三振に退けた。この回投じた10球のうち変化球はスライダー1球だけ。「気持ち良く投げてもらいたかった」という谷繁との阿吽の呼吸もバッチリで、相手ベンチを真剣勝負へと引き込んだ。
二回には試合前のホームラン競争で“場外4発”のペーニャを迎えて148キロ、149キロ…。快速球がうなりをあげてセカンドフライ。稲葉は146キロでレフトフライ、松田は147キロでセンターフライ…。さらに三回先頭の内川も真っ直ぐでセカンドフライとパーフェクトまであと二人となった。
ところが「あそこらあたりで打たせないように意識した途端にやられた」と谷繁。八番に入った田中賢にカウント2-2からの6球目、148キロを詰まりながらもレフト前に落とされた。思わず顔をしかめるマエケンの仕草が印象的だった。
「あそこまで行ったらできればノーヒットで抑えたかった。でもファンのみなさんにたくさん投票してもらっていいピッチングが見せられて良かったです」3回40球を投げて1安打無失点で前回に続いて球宴2勝目を挙げたマエケンはお立ち台でそう答えた。
4対0快勝の全セの原動力となり、投手のMVPは2004年の松坂以来という快挙だった。マエケンが投げ終えた直後の攻撃で坂本が吉川から左翼越えにツーランも運んだのも象徴的な出来事だった。
キャンプからオープン戦、そしてシーズン中と常に「マエケンさん」の背中を見てきた野村祐輔にとっても、偉大な先輩の活躍は頼もしくもあり誇りでもあった。開幕からローテを守ってきた大竹と共に3人揃ってこの場を共有できることへの喜びも大きかった。
だからセ・リーグ3人目として六回のマウンドに上がっても「こういう経験は滅多にないので楽しめたらいい」と臆することなくストライクゾーンに投げ続けた。

2014年3月22日(土)に「第5回コイのサミット広島」を開催いたします。
「早く日取りを決めて欲しい!」という熱い声にお応えして、日時と場所だけ確定いたします。パネリストの方の人選など不確定な部分もございますがご了承ください。
みなさん最大の楽しみ!二次会の予約も済ませました。場所はもちろんHarayaさんです。今回もまたファン同士の結束を高め(要するに飲み会…)、1991年以来のリーグ優勝を目指すべく熱いシーズン開幕を迎えましょう!
なお初めての方も大歓迎です。私、田辺一球が楽しく!?お相手いたします。もちろんお一人様も大歓迎いたします。
翌3月23日(日)にはマツダスタジアムで午後2時からソフトバンクとのオープン戦が開催されます。しかも3連休の真っ只中です。楽しい「広島ツアー」にしていただければ幸いです。(宿泊施設のご用意はいたしませんので各自でお願いいたします)
★日時)2014年3月22日(土)午後2時「本会議」スタート予定(午後1時30分受付開始予定)※開始時間は、若干変更になる可能性もあります。詳細は、お申込みいただいた方にメールなどで通知いたします。
★会場) ウエストプラザビル2階ホール(広島市中区紙屋町2-2-2、TEL 082-504-3131)
★アクセス) 広島ど真ん中、紙屋町交差点からすぐ。高速バスなら広島バスセンター下車、広島電鉄なら紙屋町電停下車で徒歩数分、JR広島駅からタクシー15分以内。山陽自動車道広島ICより約6キロ。駐車場は用意されておりませんので近隣でお探しください。
★会費) おひとり様3,500円(税込、ドリンク&食事付き)中学生以下は無料。会費は当日、サミット開催前に受付で集めさせていただきます。おつりのないよう、ご用意ください。
★募集定員) 40名ぐらい…
★パネリスト)田辺一球(広島魂!代表)以外は未定
★サミット参加のお募集申込み方法
「本会議」とそのあとの「二次会」の2部構成です。「一球調査団」は、今回は実施しない方向です。「本会議」会場から「二次会」会場まではたぶん、徒歩でも行くことができます。路面電車利用の場合は実費のご負担となります。
参加希望の方は、メールで以下の項目を明記の上、お申し込みください。なお、会費を当日いただくこともあり、キャンセルは極力避けていただきますようお願いいたします。
・お名前
・住所(郵便番号)
・年齢
・2人以上でご参加の場合は残る参加者全員のお名前と年齢
・あなた様、もしくは代表者連絡先電話番号(メールがお返しできない場合がございます。その際にお電話します)
・「二次会」参加の有無(お申込みのあと二次会のキャンセルは極力、避けていただきたいと思います)
・サミット参加回数(今回含む)
・その他、ご要望、ご質問など
覚醒スイング
2013年04月07日更新
お立ち台に上がったふたりのヒーローが、冷たい風の吹きつけたデーゲームのスタンドを熱くした。
「常にみんな声が出ていて、点が入りやすいムードができていたと思うし、みなさんの応援もすごく僕らにとって大きな存在なので、本当にありがとうございました」
4打数で2得点3安打1打点と1四球の活躍を見せた丸がファンにメッセージを送ったあと、マイクを向けられたマエケンが言った。
「チームの状況は苦しいですけど、ファンの皆さんはちょっと暗いです。明るく笑って球場に来てください!」
開幕第2戦で8回1失点の投球を見せながら“不発”に終わったマエケンは、東京ドームでも投げていた130キロ台中盤の高速スライダーを組み立ての中心に据えた。WBCを経験したことで「帰国してから腕が振れるし意外にスピードが出ている」真っ直ぐに変化を感じ取り、スライダーも同じ勢いで振り抜くことができた。
「一番の西岡さんはもちろん、どの打順も怖い」という阪神打線を相手に終わってみれば7回2安打1四球の無失点とほぼ完璧に抑え込んだ。真っ直ぐと高速スライダー、それにチェンジアップを低目に集め、外野に飛ばされたのは西岡の中前田、福留の左飛、コンラッドの中飛の3度だけだった。
6対1快勝の原動力がマエケンの投球内容にあったのは間違いない。だが、打線の援護がなければエースと言えども勝ちようがない。
「二番の丸がいっぱい出ていっぱい帰ってきてくれました!」。ヒーローインタビューの初っ端にマエケンはそう叫んだ。試合の流れを作ったのは8試合消化時点で早くも3度目の猛打賞獲得し、一、二回と立て続けにナイス走塁でホームに還ってきた丸だった。
打つだけではない。走っても守っても球界トップレベルの水準を目指す。丸の“イチロー化計画”は新井打撃コーチの就任と同時にスタートした。
「バッティングは力じゃない、スイングスピードとレベルスイング、そしてボールを見送る姿勢の中にいかに打ちにいく形を作るか、だ」。新井理論をナインに浸透させる作業は前年秋の日南キャンプでその第一歩を踏み出した。
新井コーチが真っ先にやったこと。それはひとりひとりのバットの形状、グリップの形、バランス、重さのチェックだった。
丸のバットはそれまで使用していたものより30グラム前後軽量化され、“スイングスピードの高速化”を可能にした。同時にこれまでダウンスイングをイメージして、構えた時に両肩のラインより高い位置に固定していたグリップを、同ラインのかなり下まで降ろした。
「打撃改造」には勇気がいる。だが丸には迷っている時間はなかった。2011年に初めて規定打席に到達して105安打を放ったのに2012年は70安打を放つのが精一杯だった。目の前に大きな壁があることは分かっていた。2000本安打の新井理論を吸収することで覚醒する自分に賭けた。
2月、再び日南に入るやいなや反復練習が始まった。「レベルスイング」への移行は簡単ではなかった。「まだまだ、自分のものにするには相当かかると思います」。キャンプ序盤は試行錯誤の連続だった。
それでもシート打撃や紅白戦が始まると、丸のバットから快音が響くようになった。グリップの位置が下がったことでスイングが以前と比べてずいぶんシンプルになった。肩の余分な力も抜けたように見えた。
オープン戦の時期になっても極端にバッティングの状態が悪くなるようなことはなくなった。「外の球をとらえることができている。精度をもっと高めたい。手ごたえは感じています」。テーマのひとつだった「確実性」が増してきた。
試合前、新井打撃コーチが上げるトスを打つ、というルーティンはマツダスタジアムでも遠征中でも3月いっぱい続けられた。最初は外角の球を強くショート頭上へ強く打ち返せるように丸から見て左45度の角度から、続いて新井コーチが丸の正面に入り、ネットの影から上げるトスをフルスイングした。
新井コーチには、かつてイチローの打撃スタイルの基本を、このトスバッティングで固めた実績と経験、もっと言えば信念がある。同じ道を歩むことで丸のバットの軌道はそれまでとはまったく違ったものになり始めた。地面と平行にバットのヘッドを移動させ、最後の大きなフォロースルーと同時に風を斬る音が聞えてきた。
オープン戦の時期にはもうひとつのテーマにも挑戦した。オープンスタンスから右足を上げて踏み込もうとすると、相手投手が「クイック」で崩しにかかってくるようになったからだ。
自分のタイミングで打とうとすれば上げた足を降ろした時には完全に差し込まれてしまう。そこで上げた右足を途中で早めに一度、地面と接触させ軽くステップして本来の踏み出し位置に右足を着地させる「二段ステップ」に打撃フォームをアレンジした。
守ること、走ることにおいてもキャンプからワンランク、ツーランク上を目指して丸はやってきた。打つだけではレギュラーにはなれない。同時並行であらゆる課題に取り組みながら丸は2013年シーズンを迎えることになった。
日南キャンプ終盤、丸や安部の屋内打撃練習を見守りながら新井コーチが話し始めた。
「よく少年野球の本などに体重を残して振りにいき、そこからもう一度体重移動などと書いてあるがそれは間違い。それではスウェーしてしまう。ステップして着地した時にピッチャーに向かっていく形ができていれば体重移動していてもOK、言い換えれば下半身は打ちにいく、しかし上半身は残すんです。そしてみんな試合で10の力で振ろうとするけど練習10なら試合は8ぐらいでいいんですよ」
新井理論の引き出しはおそらく無数にあるはずだ。打球音とマシンの油切れの音が一定のリズムで繰り返される現場で話はなおも続けられた。
「ヘッドがうまく使えないとバットが折れたりもするんですよ。そのためにはまずバットの握りから変えなくてはいけない選手もたくさんいる。そうやってヒットを重ねていく。うまくいけば280には届く。その先、いかにして300をクリアするのか?そこにはラッキーなヒットや内野安打も当然、必要になってくるんです」
話の最後に新井コーチ自らが口にした「打率3割」の目標に到達できる愛弟子は果たして…?かつて神戸の空の下、「前人未踏のシーズン200安打」を可能にした新井理論とイチローの振り子打法が紡いだ物語。その続編がこの広島でまさに今、始まろうとしている。