赤の魂(携帯版)

完全無欠の証明6

2012年05月19日

今季最多にあと16人と迫る3万1803人の真っ赤なスタンドの大歓声にヒーローが言った。

「はい、すごく嬉しいです。何度もピンチがあったんですけど、野手の方がしっかり守って下さったので、ゼロが積み重ねていけたと思います。学生の頃から憧れの先輩だったので勝ててうれしいです」

前回、4月29日の3万人越えも先発は野村祐輔だった。ヤクルト打線を8回零封して初の地元お立ち台に立った。ファンの期待を一身に背負い、今度は12球団最高の得点力を誇る日本ハム打線を7回零封した。

原動力は「ピンチになればなるほど力を発揮するのがいいピッチャー」という発想と「それを目指しています」という明確な目的意識。「完全無欠」へ前進するために「憧れの先輩」斉藤祐樹との投げ合いは願ってもないチャンスだった。

「相手よりも長くマウンドに立っていたい気持ちはあります」試合前にそう誓ったからには先制点を許す訳にはかなかった。「絶対に点をやらないという気迫が伝わってきた」。ベンチの野村監督はすぐにその「気」を感じ取った。

一方の日本ハムベンチにも並々ならぬムードが漂っていた。試合前、栗山監督は2戦目のマエケンも想定して「簡単には点を取らせてもらえない。交流戦を占う上でものすごく大事な2試合。命がけで行きたい」と宣言。と同時に前回登板で打ち込まれた斉藤に「俺も二人の投げ合う姿を見たいから今日は代えないぞ」と言明していた。

試合はプレーボールと同時にわずかのスキも許されない、際どい場面の連続になった。

「一番糸井」は出塁率4割3分台でリーグトップ。「三番田中」は軽く打率3割を越え、未来の全日本の「四番中田」を挟んで「五番稲葉」は打率・352で12球団最高。さらに進境著しい「七番陽」や「八番鶴岡」までもが打率3割をクリアして、しかもどこからでも一発が打てる打線はやはり一筋縄ではいかなかった。

そしてヤマ場はいきなり二回にやってきた。先頭稲葉の二塁打と陽の送りバントで一死三塁の大ピンチになった。強打の陽に送らせた日本ハムベンチは、次なる勝負手のタイミングを見計らっていた。

続く飯山への初球はボールになった。2球目を投じる瞬間に飯山がスクイズの構えに入った。「とっさの判断」でワンバウンドを投げると、それを相手もしっかり当ててファウルにされた。驚いた表情の野村祐輔の向こうで栗山監督が思わず視線を下にやっていた。

三回にはフォアボールの走者を許したが低目へのチェンジアップとスライダーを駆使して後続を抑えた。序盤3回を無失点。しかし肝心の味方打線の援護は、今回もまた期待薄の気配が漂った。初回の無死一塁で二番小窪がピッチャーゴロ併殺打に倒れて3回までを9人で封じられた。

「僕が点を取られなければチームは負けることはないんです」。五回にも一死二塁にされたが糸井の懐にスライダーを投げ込み空振り三振に仕留めた。続く小谷野は外スラでライトフライに取った。似たような展開が開幕からもう7試合も続き、少々のことでは動じなくなっていた。

六回には先頭の田中に初球のカーブを左中間二塁打された。「どこからでもチャンスを作られ常にピンチだった」という展開は、逆にセ・リーグ防御率トップを行くルーキー右腕の力量を際立たせることになった。

続く中田をボールになるスライダーでライトフライに打ち取ると稲葉は低目ボールゾーンへのチェンジアップでファーストゴロ。最後は陽をアウトロー、ボールになるチェンジアップでハーフスイング三振に仕留めガッツポーズで大きく吠えた。

スコアボードに11個のゼロが並び「さすがだなと思いました」と野村祐輔。互いに譲らぬ展開に風穴を開けたのは直後の攻撃で先頭バッターとして打席に入った梵だった。

「チェンジアップの失投でした」と斉藤が悔やむ1球をレフトスタンドに運んで待望の先制点、いや決勝点が入った。七回、無死一、二塁とまたもやピンチを迎えた野村祐輔の目の前で栗山監督が斉藤に代打を告げた瞬間、「東京六大学30勝、300奪三振の伝説」を作った二人の投げ合いに終止符が打たれた。

代打村田は送りバント失敗、さらに糸井はセカンドゴロダブルプレー。顔色なし、の三塁ベンチの方へ背番号19を向けて、プロ3勝目を力で手繰り寄せた野村祐輔がゆっくりと一塁ベンチに戻ってきた。

それから40数分後、満員のスタンドから大歓声が上がり、一塁ベンチではカープナインがハイタッチを繰り返した。チームにとっては今季11度目の完封勝ち。ミコライオ、サファテを投入して、得意の必勝リレーで見事に締めた。

試合後、興味深い声がベンチ裏のあちこちから聞こえてきた。

「投げっぷりがいい。堂々といている。打者をしっかり見ていますね」(稲葉)

「野村がすごくいいピッチングをしたので今日(の途中交代)は仕方がない」(斉藤祐樹)

「野村君はイメージ通り、コントロールが良く踏み込めば内側へのストライク…、チェンジアップも腕を振りながら投げているし…」(栗山監督)

「1年目でこれだけのマウンド上でのパフォーマンスは信じられない!ユウスケはこのリーグで間違いなくトップクラス、もしかしたら12球団でもトップを争うのでないか?」(サファテ)



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「第4回コイのサミット」開催のお知らせ

2014年3月22日(土)に「第5回コイのサミット広島」を開催いたします。

「早く日取りを決めて欲しい!」という熱い声にお応えして、日時と場所だけ確定いたします。パネリストの方の人選など不確定な部分もございますがご了承ください。
みなさん最大の楽しみ!二次会の予約も済ませました。場所はもちろんHarayaさんです。今回もまたファン同士の結束を高め(要するに飲み会…)、1991年以来のリーグ優勝を目指すべく熱いシーズン開幕を迎えましょう!

なお初めての方も大歓迎です。私、田辺一球が楽しく!?お相手いたします。もちろんお一人様も大歓迎いたします。

翌3月23日(日)にはマツダスタジアムで午後2時からソフトバンクとのオープン戦が開催されます。しかも3連休の真っ只中です。楽しい「広島ツアー」にしていただければ幸いです。(宿泊施設のご用意はいたしませんので各自でお願いいたします)

★日時)2014年3月22日(土)午後2時「本会議」スタート予定(午後1時30分受付開始予定)※開始時間は、若干変更になる可能性もあります。詳細は、お申込みいただいた方にメールなどで通知いたします。

★会場) ウエストプラザビル2階ホール(広島市中区紙屋町2-2-2、TEL 082-504-3131)

★アクセス) 広島ど真ん中、紙屋町交差点からすぐ。高速バスなら広島バスセンター下車、広島電鉄なら紙屋町電停下車で徒歩数分、JR広島駅からタクシー15分以内。山陽自動車道広島ICより約6キロ。駐車場は用意されておりませんので近隣でお探しください。

★会費) おひとり様3,500円(税込、ドリンク&食事付き)中学生以下は無料。会費は当日、サミット開催前に受付で集めさせていただきます。おつりのないよう、ご用意ください。

★募集定員) 40名ぐらい…

★パネリスト)田辺一球(広島魂!代表)以外は未定

★サミット参加のお募集申込み方法
「本会議」とそのあとの「二次会」の2部構成です。「一球調査団」は、今回は実施しない方向です。「本会議」会場から「二次会」会場まではたぶん、徒歩でも行くことができます。路面電車利用の場合は実費のご負担となります。

参加希望の方は、メールで以下の項目を明記の上、お申し込みください。なお、会費を当日いただくこともあり、キャンセルは極力避けていただきますようお願いいたします。

・お名前 
・住所(郵便番号)
・年齢
・2人以上でご参加の場合は残る参加者全員のお名前と年齢
・あなた様、もしくは代表者連絡先電話番号(メールがお返しできない場合がございます。その際にお電話します)
・「二次会」参加の有無(お申込みのあと二次会のキャンセルは極力、避けていただきたいと思います)
・サミット参加回数(今回含む)
・その他、ご要望、ご質問など

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覚醒スイング

2013年04月07日更新

お立ち台に上がったふたりのヒーローが、冷たい風の吹きつけたデーゲームのスタンドを熱くした。

「常にみんな声が出ていて、点が入りやすいムードができていたと思うし、みなさんの応援もすごく僕らにとって大きな存在なので、本当にありがとうございました」

4打数で2得点3安打1打点と1四球の活躍を見せた丸がファンにメッセージを送ったあと、マイクを向けられたマエケンが言った。

「チームの状況は苦しいですけど、ファンの皆さんはちょっと暗いです。明るく笑って球場に来てください!」

開幕第2戦で8回1失点の投球を見せながら“不発”に終わったマエケンは、東京ドームでも投げていた130キロ台中盤の高速スライダーを組み立ての中心に据えた。WBCを経験したことで「帰国してから腕が振れるし意外にスピードが出ている」真っ直ぐに変化を感じ取り、スライダーも同じ勢いで振り抜くことができた。

「一番の西岡さんはもちろん、どの打順も怖い」という阪神打線を相手に終わってみれば7回2安打1四球の無失点とほぼ完璧に抑え込んだ。真っ直ぐと高速スライダー、それにチェンジアップを低目に集め、外野に飛ばされたのは西岡の中前田、福留の左飛、コンラッドの中飛の3度だけだった。

6対1快勝の原動力がマエケンの投球内容にあったのは間違いない。だが、打線の援護がなければエースと言えども勝ちようがない。

「二番の丸がいっぱい出ていっぱい帰ってきてくれました!」。ヒーローインタビューの初っ端にマエケンはそう叫んだ。試合の流れを作ったのは8試合消化時点で早くも3度目の猛打賞獲得し、一、二回と立て続けにナイス走塁でホームに還ってきた丸だった。

打つだけではない。走っても守っても球界トップレベルの水準を目指す。丸の“イチロー化計画”は新井打撃コーチの就任と同時にスタートした。

「バッティングは力じゃない、スイングスピードとレベルスイング、そしてボールを見送る姿勢の中にいかに打ちにいく形を作るか、だ」。新井理論をナインに浸透させる作業は前年秋の日南キャンプでその第一歩を踏み出した。

新井コーチが真っ先にやったこと。それはひとりひとりのバットの形状、グリップの形、バランス、重さのチェックだった。

丸のバットはそれまで使用していたものより30グラム前後軽量化され、“スイングスピードの高速化”を可能にした。同時にこれまでダウンスイングをイメージして、構えた時に両肩のラインより高い位置に固定していたグリップを、同ラインのかなり下まで降ろした。

「打撃改造」には勇気がいる。だが丸には迷っている時間はなかった。2011年に初めて規定打席に到達して105安打を放ったのに2012年は70安打を放つのが精一杯だった。目の前に大きな壁があることは分かっていた。2000本安打の新井理論を吸収することで覚醒する自分に賭けた。

2月、再び日南に入るやいなや反復練習が始まった。「レベルスイング」への移行は簡単ではなかった。「まだまだ、自分のものにするには相当かかると思います」。キャンプ序盤は試行錯誤の連続だった。

それでもシート打撃や紅白戦が始まると、丸のバットから快音が響くようになった。グリップの位置が下がったことでスイングが以前と比べてずいぶんシンプルになった。肩の余分な力も抜けたように見えた。

オープン戦の時期になっても極端にバッティングの状態が悪くなるようなことはなくなった。「外の球をとらえることができている。精度をもっと高めたい。手ごたえは感じています」。テーマのひとつだった「確実性」が増してきた。

試合前、新井打撃コーチが上げるトスを打つ、というルーティンはマツダスタジアムでも遠征中でも3月いっぱい続けられた。最初は外角の球を強くショート頭上へ強く打ち返せるように丸から見て左45度の角度から、続いて新井コーチが丸の正面に入り、ネットの影から上げるトスをフルスイングした。

新井コーチには、かつてイチローの打撃スタイルの基本を、このトスバッティングで固めた実績と経験、もっと言えば信念がある。同じ道を歩むことで丸のバットの軌道はそれまでとはまったく違ったものになり始めた。地面と平行にバットのヘッドを移動させ、最後の大きなフォロースルーと同時に風を斬る音が聞えてきた。

オープン戦の時期にはもうひとつのテーマにも挑戦した。オープンスタンスから右足を上げて踏み込もうとすると、相手投手が「クイック」で崩しにかかってくるようになったからだ。

自分のタイミングで打とうとすれば上げた足を降ろした時には完全に差し込まれてしまう。そこで上げた右足を途中で早めに一度、地面と接触させ軽くステップして本来の踏み出し位置に右足を着地させる「二段ステップ」に打撃フォームをアレンジした。

守ること、走ることにおいてもキャンプからワンランク、ツーランク上を目指して丸はやってきた。打つだけではレギュラーにはなれない。同時並行であらゆる課題に取り組みながら丸は2013年シーズンを迎えることになった。

日南キャンプ終盤、丸や安部の屋内打撃練習を見守りながら新井コーチが話し始めた。

「よく少年野球の本などに体重を残して振りにいき、そこからもう一度体重移動などと書いてあるがそれは間違い。それではスウェーしてしまう。ステップして着地した時にピッチャーに向かっていく形ができていれば体重移動していてもOK、言い換えれば下半身は打ちにいく、しかし上半身は残すんです。そしてみんな試合で10の力で振ろうとするけど練習10なら試合は8ぐらいでいいんですよ」

新井理論の引き出しはおそらく無数にあるはずだ。打球音とマシンの油切れの音が一定のリズムで繰り返される現場で話はなおも続けられた。

「ヘッドがうまく使えないとバットが折れたりもするんですよ。そのためにはまずバットの握りから変えなくてはいけない選手もたくさんいる。そうやってヒットを重ねていく。うまくいけば280には届く。その先、いかにして300をクリアするのか?そこにはラッキーなヒットや内野安打も当然、必要になってくるんです」

話の最後に新井コーチ自らが口にした「打率3割」の目標に到達できる愛弟子は果たして…?かつて神戸の空の下、「前人未踏のシーズン200安打」を可能にした新井理論とイチローの振り子打法が紡いだ物語。その続編がこの広島でまさに今、始まろうとしている。

カープと広島を愛する人たちに贈る携帯サイトの決定版。テレビやラジオより速く、新聞より詳しく、雑誌より感動できるカープナインの365話物語。田辺一球責任編集。すでに7年以上、一日も休むことなく続くカープコラム「赤の魂」やカープ情報や新球場問題などを速報する「ニュース速報」他サイトと比較して一目瞭然の「試合速報」現場で集めた「ファーム情報」携帯サイト読者とメールのやりとりする中から新たなコミュニティーを創造する「コイの季節をあなたにも...」。5つのコンテンツで税込み178円です。なお、携帯サイトと当HPをリンクさせ、全国から集まったみなさんの声をカープと新球場の未来のために同携帯サイト上や当HP上、あるいはスポーツコミュニケーションズ・ウエストが発行する書籍内において掲載させていただくことがありますのであらかじめご了解ください。

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