赤の魂(携帯版)

8・6、コイの街

2011年08月06日

3万人を超えるファンと両軍ベンチ。記者席も黙とうを捧げた。8月6日、広島に53年ぶりのプロ野球が帰ってきた。「特別な1年」に「特別な一日」が加わった。

プレーボールが告げられると、場内BGMと鳴り物の響かないグラウンドにカープナインが散っていき、巨人ベンチも静かにその様子を見守っていた。

「前回」対戦したのも巨人だった。3年前までホームグラウンドとして慣れ親しんだ元の広島市民球場は1958年の完成で、その2年目のことだった。

ナイター照明を備えた被爆地ヒロシマに誕生した本格野球場でのダブルヘッダー。2試合目、グラウンドは希望の灯りに照らし出された。先の見えない廃墟の街に新球場。しかし、球団経営は厳しく、チームも脆弱で、以後、幾多の危機がコイの街を襲った。

「前回」の巨人戦でプレーしたひとりに「昭和50年カープ初V」の指揮官、古葉竹識さんがいる。テレビ番組の取材でマツダスタジアムに姿を見せた古葉さんはすぐにファンに囲まれ、色紙にペンを走らせた。

「皆さんの気持ちが、もう(試合を)やってもいいんだよ、ということになったのではないでしょうか?厳しい時代を乗り越えてきたからこそ、ここまで来ることができました」

古葉さんのかつての自宅はまだ広島市内にある。自宅そばに竹やぶが茂る。そこには1945年のこの日以降、原子爆弾の惨禍から命からがらに逃れてきた被爆者のための救場所が急ごしらえで用意された。

それから30年後、「耐えて勝つ」を合言葉にチームを頂点に導いた青年監督は「試合中、一度もボールから目を離さず、常にスキのない野球を目指した」という。

初優勝のシーズン、その「象徴」として瞬く間に全国に広まった「赤ヘル」野球。機動力を前面に押し出した闘争心のベースボール。「赤」をチームに持ち込だ、故ジョー・ルーツ監督はチームを受け持つに当たり、明確な意思を当時負けることに慣れていたナインに説いた。

「君たちは君たち自身に、野球に、そして地域社会に対して責任がある。君たちの可能性に富んだ毎日に向かってがんばってほしい。ヘ゛ストを尽くせ。カーフ゜のファンはすばらしい。彼らにいい試合を見せねばならない。ファイトこそ勝利の基本である。勝つことがすべてではない。しかし勝たねばならない」

古葉さんと同じくテレビ解説でマツダスタジアムにやって来た衣笠祥雄さんは言う。

「ルーツは(コーチから)監督になってガラリと変わりました。闘争心の塊、その象徴があの赤だったんです」

衣笠さんとともにカープ黄金期を築いた山本浩二さんもこう述懐する。

「衣笠、三村、水谷、三村…。ちょうどみんな“これから”という時期に鍛えられた。将来、優勝を目指すという明確な目標の下でみんなが鍛えられ、チームカラーの赤で結束した」

「ファイトこそ勝利の基本」「勝つことがすべてではない」「しかし我々は復興の街のシンボルとして勝たねばならない」
被爆から66年、カープV1から36年目の広島。午後8時過ぎ、ナイター照明に輝く新球場のすぐ横の広場にはキャンドルによって「8月6日」の文字が浮かびあがった。平和公園の「平和の灯」から採火されたものだった。

同じころ野村、原の両軍監督とナインが平和への想いを記したとうろうが原爆ドーム前の元安川に流された。すでに内野席の半分以上が解体された元の市民球場と原爆ドーム、とうろう流しを一枚の画に収めるのはこれが最後になるかもしれない。

実は「8・6公式戦開催」は「市民球場ラストイヤー」にも検討され、実現の一歩手前までこぎ着けていた。「8・6」を「休場日」と定めていた広島市の条例も今回を迎えるに当たり改正された。

「子供たちに夢と平和を」

石原選手会長の直筆とうろうが川面で揺れるころ、グラウンドには重苦しい空気が漂い始めていた。

六、七回にやっと1点ずつを返したものの2対5の劣勢。先発ジオの不安定な立ち上がりが最後まで響きチームはあえなく連敗…。巨人に抜かれ、わずか二晩で2位から4位に後退した。

「いつも勝ちたいと思っているけどきょう8月6日はいろんな意味でね…。広島で野球をやることができる、ということを考えながら選手も僕もプレーに臨んだ。ファンの人もそういう気持ちになれたと思います。ただ非常に残念な結果に終わった」

上昇機運にあった打線も巨人先発の東野の前に五回までわずかに1安打。先のハマスタ3連戦まで噛みあっていたかのように見えた投打の歯車に狂いが生じ始め、逆にその時には目立たなかった細かい守りのミス、走塁ミスが勝敗に直結するケースが増えてきた。

初回の失点などはその典型だった。二番藤村の左前打はショートすぐ左を抜けたが、木村の動きは明らかに昨夜のミスを引きずっていた。二死から藤村に二盗を許すと、ジオは4月の対戦で一発を浴びたラミレスを歩かせ一、二塁。続く高橋由の初球で藤村に三盗を決められ、高橋由、小笠原の連続ヒットで3点を奪われた。

「我々は発展途上のチームだけど、せっかくここまで頑張ってきた。今、何をすべきか?巨人にはずっと負けている。明日は勝つつもりでグラウンドに立ちたい。明日は総動員でいきたいと思います」

対巨人6連敗を受け、指揮官は“非常事態”を宣言、総動員体制での連敗ストップを“優勝戦線”生き残りへの条件とした。

「勝つことがすべてではない」が「我々は勝たなければならない」。「破壊と復興」(平和記念式典参加、湯崎広島県知事)。戦後復興期を経て、今なおこの街で熱狂的な支持を集めるコイの群れ。「赤の魂」を宿すナインの泳ぎ着く先を、ファンはこれからも熱い瞳で見守っていく。

★巨人・原監督の試合前談話 「今日は日本にとって大切な日です。その日にここ広島で53年ぶりにプロ野球が行われることは私にとって感無量の想いです。広島の人たちは前後、原爆による被害の中で一生懸命復興を果たされました。みんなが必ず立ち直ってみせると必死に生きていたと先輩たちから聞きました。今日は平和に感謝し野球できる喜びをかみしめながら全力プレーをお見せします」



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「第4回コイのサミット」開催のお知らせ

2014年3月22日(土)に「第5回コイのサミット広島」を開催いたします。

「早く日取りを決めて欲しい!」という熱い声にお応えして、日時と場所だけ確定いたします。パネリストの方の人選など不確定な部分もございますがご了承ください。
みなさん最大の楽しみ!二次会の予約も済ませました。場所はもちろんHarayaさんです。今回もまたファン同士の結束を高め(要するに飲み会…)、1991年以来のリーグ優勝を目指すべく熱いシーズン開幕を迎えましょう!

なお初めての方も大歓迎です。私、田辺一球が楽しく!?お相手いたします。もちろんお一人様も大歓迎いたします。

翌3月23日(日)にはマツダスタジアムで午後2時からソフトバンクとのオープン戦が開催されます。しかも3連休の真っ只中です。楽しい「広島ツアー」にしていただければ幸いです。(宿泊施設のご用意はいたしませんので各自でお願いいたします)

★日時)2014年3月22日(土)午後2時「本会議」スタート予定(午後1時30分受付開始予定)※開始時間は、若干変更になる可能性もあります。詳細は、お申込みいただいた方にメールなどで通知いたします。

★会場) ウエストプラザビル2階ホール(広島市中区紙屋町2-2-2、TEL 082-504-3131)

★アクセス) 広島ど真ん中、紙屋町交差点からすぐ。高速バスなら広島バスセンター下車、広島電鉄なら紙屋町電停下車で徒歩数分、JR広島駅からタクシー15分以内。山陽自動車道広島ICより約6キロ。駐車場は用意されておりませんので近隣でお探しください。

★会費) おひとり様3,500円(税込、ドリンク&食事付き)中学生以下は無料。会費は当日、サミット開催前に受付で集めさせていただきます。おつりのないよう、ご用意ください。

★募集定員) 40名ぐらい…

★パネリスト)田辺一球(広島魂!代表)以外は未定

★サミット参加のお募集申込み方法
「本会議」とそのあとの「二次会」の2部構成です。「一球調査団」は、今回は実施しない方向です。「本会議」会場から「二次会」会場まではたぶん、徒歩でも行くことができます。路面電車利用の場合は実費のご負担となります。

参加希望の方は、メールで以下の項目を明記の上、お申し込みください。なお、会費を当日いただくこともあり、キャンセルは極力避けていただきますようお願いいたします。

・お名前 
・住所(郵便番号)
・年齢
・2人以上でご参加の場合は残る参加者全員のお名前と年齢
・あなた様、もしくは代表者連絡先電話番号(メールがお返しできない場合がございます。その際にお電話します)
・「二次会」参加の有無(お申込みのあと二次会のキャンセルは極力、避けていただきたいと思います)
・サミット参加回数(今回含む)
・その他、ご要望、ご質問など

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覚醒スイング

2013年04月07日更新

お立ち台に上がったふたりのヒーローが、冷たい風の吹きつけたデーゲームのスタンドを熱くした。

「常にみんな声が出ていて、点が入りやすいムードができていたと思うし、みなさんの応援もすごく僕らにとって大きな存在なので、本当にありがとうございました」

4打数で2得点3安打1打点と1四球の活躍を見せた丸がファンにメッセージを送ったあと、マイクを向けられたマエケンが言った。

「チームの状況は苦しいですけど、ファンの皆さんはちょっと暗いです。明るく笑って球場に来てください!」

開幕第2戦で8回1失点の投球を見せながら“不発”に終わったマエケンは、東京ドームでも投げていた130キロ台中盤の高速スライダーを組み立ての中心に据えた。WBCを経験したことで「帰国してから腕が振れるし意外にスピードが出ている」真っ直ぐに変化を感じ取り、スライダーも同じ勢いで振り抜くことができた。

「一番の西岡さんはもちろん、どの打順も怖い」という阪神打線を相手に終わってみれば7回2安打1四球の無失点とほぼ完璧に抑え込んだ。真っ直ぐと高速スライダー、それにチェンジアップを低目に集め、外野に飛ばされたのは西岡の中前田、福留の左飛、コンラッドの中飛の3度だけだった。

6対1快勝の原動力がマエケンの投球内容にあったのは間違いない。だが、打線の援護がなければエースと言えども勝ちようがない。

「二番の丸がいっぱい出ていっぱい帰ってきてくれました!」。ヒーローインタビューの初っ端にマエケンはそう叫んだ。試合の流れを作ったのは8試合消化時点で早くも3度目の猛打賞獲得し、一、二回と立て続けにナイス走塁でホームに還ってきた丸だった。

打つだけではない。走っても守っても球界トップレベルの水準を目指す。丸の“イチロー化計画”は新井打撃コーチの就任と同時にスタートした。

「バッティングは力じゃない、スイングスピードとレベルスイング、そしてボールを見送る姿勢の中にいかに打ちにいく形を作るか、だ」。新井理論をナインに浸透させる作業は前年秋の日南キャンプでその第一歩を踏み出した。

新井コーチが真っ先にやったこと。それはひとりひとりのバットの形状、グリップの形、バランス、重さのチェックだった。

丸のバットはそれまで使用していたものより30グラム前後軽量化され、“スイングスピードの高速化”を可能にした。同時にこれまでダウンスイングをイメージして、構えた時に両肩のラインより高い位置に固定していたグリップを、同ラインのかなり下まで降ろした。

「打撃改造」には勇気がいる。だが丸には迷っている時間はなかった。2011年に初めて規定打席に到達して105安打を放ったのに2012年は70安打を放つのが精一杯だった。目の前に大きな壁があることは分かっていた。2000本安打の新井理論を吸収することで覚醒する自分に賭けた。

2月、再び日南に入るやいなや反復練習が始まった。「レベルスイング」への移行は簡単ではなかった。「まだまだ、自分のものにするには相当かかると思います」。キャンプ序盤は試行錯誤の連続だった。

それでもシート打撃や紅白戦が始まると、丸のバットから快音が響くようになった。グリップの位置が下がったことでスイングが以前と比べてずいぶんシンプルになった。肩の余分な力も抜けたように見えた。

オープン戦の時期になっても極端にバッティングの状態が悪くなるようなことはなくなった。「外の球をとらえることができている。精度をもっと高めたい。手ごたえは感じています」。テーマのひとつだった「確実性」が増してきた。

試合前、新井打撃コーチが上げるトスを打つ、というルーティンはマツダスタジアムでも遠征中でも3月いっぱい続けられた。最初は外角の球を強くショート頭上へ強く打ち返せるように丸から見て左45度の角度から、続いて新井コーチが丸の正面に入り、ネットの影から上げるトスをフルスイングした。

新井コーチには、かつてイチローの打撃スタイルの基本を、このトスバッティングで固めた実績と経験、もっと言えば信念がある。同じ道を歩むことで丸のバットの軌道はそれまでとはまったく違ったものになり始めた。地面と平行にバットのヘッドを移動させ、最後の大きなフォロースルーと同時に風を斬る音が聞えてきた。

オープン戦の時期にはもうひとつのテーマにも挑戦した。オープンスタンスから右足を上げて踏み込もうとすると、相手投手が「クイック」で崩しにかかってくるようになったからだ。

自分のタイミングで打とうとすれば上げた足を降ろした時には完全に差し込まれてしまう。そこで上げた右足を途中で早めに一度、地面と接触させ軽くステップして本来の踏み出し位置に右足を着地させる「二段ステップ」に打撃フォームをアレンジした。

守ること、走ることにおいてもキャンプからワンランク、ツーランク上を目指して丸はやってきた。打つだけではレギュラーにはなれない。同時並行であらゆる課題に取り組みながら丸は2013年シーズンを迎えることになった。

日南キャンプ終盤、丸や安部の屋内打撃練習を見守りながら新井コーチが話し始めた。

「よく少年野球の本などに体重を残して振りにいき、そこからもう一度体重移動などと書いてあるがそれは間違い。それではスウェーしてしまう。ステップして着地した時にピッチャーに向かっていく形ができていれば体重移動していてもOK、言い換えれば下半身は打ちにいく、しかし上半身は残すんです。そしてみんな試合で10の力で振ろうとするけど練習10なら試合は8ぐらいでいいんですよ」

新井理論の引き出しはおそらく無数にあるはずだ。打球音とマシンの油切れの音が一定のリズムで繰り返される現場で話はなおも続けられた。

「ヘッドがうまく使えないとバットが折れたりもするんですよ。そのためにはまずバットの握りから変えなくてはいけない選手もたくさんいる。そうやってヒットを重ねていく。うまくいけば280には届く。その先、いかにして300をクリアするのか?そこにはラッキーなヒットや内野安打も当然、必要になってくるんです」

話の最後に新井コーチ自らが口にした「打率3割」の目標に到達できる愛弟子は果たして…?かつて神戸の空の下、「前人未踏のシーズン200安打」を可能にした新井理論とイチローの振り子打法が紡いだ物語。その続編がこの広島でまさに今、始まろうとしている。

カープと広島を愛する人たちに贈る携帯サイトの決定版。テレビやラジオより速く、新聞より詳しく、雑誌より感動できるカープナインの365話物語。田辺一球責任編集。すでに7年以上、一日も休むことなく続くカープコラム「赤の魂」やカープ情報や新球場問題などを速報する「ニュース速報」他サイトと比較して一目瞭然の「試合速報」現場で集めた「ファーム情報」携帯サイト読者とメールのやりとりする中から新たなコミュニティーを創造する「コイの季節をあなたにも...」。5つのコンテンツで税込み178円です。なお、携帯サイトと当HPをリンクさせ、全国から集まったみなさんの声をカープと新球場の未来のために同携帯サイト上や当HP上、あるいはスポーツコミュニケーションズ・ウエストが発行する書籍内において掲載させていただくことがありますのであらかじめご了解ください。

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