赤の魂(携帯版)

金本少年に捧ぐ

2012年10月09日

「野球というスポーツ、野球の神様、ありがとうございました!」

金本知憲がファンと甲子園に別れを告げた。4万7106人の大観衆の前で声を張り上げ、堂々とスピーチした。

最期も四番、フルイニング出場だった。同期入団のDeNA三浦大輔と骨のきしむような対戦を4度繰り返し、七回一打2打点のチャンスでは捕邪飛に倒れた。

歴代7位、長嶋茂雄の1521打点にあと1及ばなかった。だが連続フルイニング出場の世界記録ほか、積み重ねた数字はもはや誰にも真似のできないものになっていた。

広島の山や川、海を見て育った金本は将来、プロ野球の選手かプロレスラーになることを夢見る少年だった。小学生のころから野球もやった。身体測定では背筋力測定器をぶち壊した。

中学に進むと飛距離が半端じゃなくなってきた。顧問の先生から「ライトには打つな、隣に迷惑がかかる」と言われ続けた。

中学野球の大会が終わると、次に何をすればいいのかその先が見えなくなった。そこで自宅から数キロ先にある標高221メートルの黄金残(おうごんざん)の頂上まで毎日、ランニングすることを始めてみた。

「これから自分はどういう人生を歩むのか」。未来は、その坂道を包み込む霧の中にあった。

雨の日も風の日も走り続けた。

広陵高校に進学したが甲子園とは縁がなかった。大学はどうするか。諸事情あって一浪して東北福祉大へ進んだ。

1991年のドラフト4位で幸いにして地元球団に入ることができた。ドラフト1位の町田公二郎にメディアが殺到し、ほとんど目立たないまま1年目のシーズンを終えた。

「前田がもうバリバリやっていたし、いい左バッターが大勢いた。自分はまともにバッティング練習もさせてもらえない立場だった。どうせダメならやることだけはやってみよう、上には伸びんから横を大きくしようと思った」

当時、カープの選手が多く出入りするようになっていた市内のトレーニングクラブで筋力トレに取り組みだしたのはそういう理由からだった。

一方、打つ方では当時の山本一義ヘッドコーチに徹底的に左投手を打つ練習をやらされた。

「あれもこれもやっていたらきっとうまくいってなかったと思う。まずシンプルに狙った球をとらえることだけを考えた」

2年目もパッとしなかったが三村監督が就任した3年目で69安打を放ちそのうち17本がホームラン。仮に140安打なら35発前後は可能な数字を叩き出して「あれでいける」と自信を深めた。

野村謙二郎、緒方孝市、前田智徳、江藤智…。そうそうたるメンバーと束になって「ビッグレッドマシーン」を形成し、“金満”巨人に真っ向から挑んだ。

「キャンプで鍛えて、オープン戦を終え開幕を迎える時にみんな言葉を交わす時、ホントに何とも言えない気持ちになります。今年は一番“わらかしてくれる”新井もいる。楽しみですね」

開幕直前の広島市民球場のスタンドで、そんな話をしたこともあった。

達川カープ2年目にはトリプルスリーを達成して、その名は地方区から一躍、全国区に広まった。それから2シーズンが経過して赤いユニホームを脱ぐ時がやってきた。「赤い帽子をかぶった魂は忘れない」の言葉を残し、活躍の場を新天地に求めた。

阪神の金本はさらに凄みを増し、チームをリーグ優勝に導いただけでなく「右腕だけでヒットを打った」などなど数々の伝説を残すようになった。右手首に死球を受け、つけていた瑠璃の数珠が弾き飛んでも翌日には平気な顔で打席に立った。

剛腕に成長した黒田博樹との「大将戦」は熾烈を極めた。互いに尋常ならぬ空気を嗅ぎ取り、力対力の勝負を繰り返した。

グラウンド外でも阪神はやはり特別なところで、マスコミの取材攻勢も半端ではなかった。ある時、まったく不本意なことを、ある社に記事にされたことがあった。

球団やチームメートに迷惑がかかってしまう…。以来、口数が極端に減っていった。豪放らい落な性格に合わない“やり方”は本人にとっても大きな負担だった。

やがて練習中に右肩に深いキズを負うという致命的なアクシデントに見舞われた。自宅でこまめに光線治療を行うなどして維持してきた不死身の肉体も「腱」や「筋」が切れてしまっては、さすがにいかんともし難いものがあった。

周囲に書き立てられスタメンを外され、外野の守りでも投げられないのだから当然、悪戦苦闘した。

「最初と最後の3年間、こんなに辛い人生があるのか…」と金本は振り返った。一方で「世の中、思い通りにいかないのは当たり前」という達観した見方でこの世界をずっと歩んできたのも事実である。

阪神のユニホームを脱いでも、きっと慌ただしい日々が続くことだろう。かつて「現役を辞めたら野球とは関係ない仕事につきたい」と話していたこともあったが、周囲が球界の至宝を放っておくはずもない。

少し落ち着いたら時間を作り、広島の風に吹かれながら懐かしい風景の中を歩いてみるといい。

21年間の現役生活と44歳になった自分と、そしてこれから始まる新たな未来のために…。
 



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「第4回コイのサミット」開催のお知らせ

2014年3月22日(土)に「第5回コイのサミット広島」を開催いたします。

「早く日取りを決めて欲しい!」という熱い声にお応えして、日時と場所だけ確定いたします。パネリストの方の人選など不確定な部分もございますがご了承ください。
みなさん最大の楽しみ!二次会の予約も済ませました。場所はもちろんHarayaさんです。今回もまたファン同士の結束を高め(要するに飲み会…)、1991年以来のリーグ優勝を目指すべく熱いシーズン開幕を迎えましょう!

なお初めての方も大歓迎です。私、田辺一球が楽しく!?お相手いたします。もちろんお一人様も大歓迎いたします。

翌3月23日(日)にはマツダスタジアムで午後2時からソフトバンクとのオープン戦が開催されます。しかも3連休の真っ只中です。楽しい「広島ツアー」にしていただければ幸いです。(宿泊施設のご用意はいたしませんので各自でお願いいたします)

★日時)2014年3月22日(土)午後2時「本会議」スタート予定(午後1時30分受付開始予定)※開始時間は、若干変更になる可能性もあります。詳細は、お申込みいただいた方にメールなどで通知いたします。

★会場) ウエストプラザビル2階ホール(広島市中区紙屋町2-2-2、TEL 082-504-3131)

★アクセス) 広島ど真ん中、紙屋町交差点からすぐ。高速バスなら広島バスセンター下車、広島電鉄なら紙屋町電停下車で徒歩数分、JR広島駅からタクシー15分以内。山陽自動車道広島ICより約6キロ。駐車場は用意されておりませんので近隣でお探しください。

★会費) おひとり様3,500円(税込、ドリンク&食事付き)中学生以下は無料。会費は当日、サミット開催前に受付で集めさせていただきます。おつりのないよう、ご用意ください。

★募集定員) 40名ぐらい…

★パネリスト)田辺一球(広島魂!代表)以外は未定

★サミット参加のお募集申込み方法
「本会議」とそのあとの「二次会」の2部構成です。「一球調査団」は、今回は実施しない方向です。「本会議」会場から「二次会」会場まではたぶん、徒歩でも行くことができます。路面電車利用の場合は実費のご負担となります。

参加希望の方は、メールで以下の項目を明記の上、お申し込みください。なお、会費を当日いただくこともあり、キャンセルは極力避けていただきますようお願いいたします。

・お名前 
・住所(郵便番号)
・年齢
・2人以上でご参加の場合は残る参加者全員のお名前と年齢
・あなた様、もしくは代表者連絡先電話番号(メールがお返しできない場合がございます。その際にお電話します)
・「二次会」参加の有無(お申込みのあと二次会のキャンセルは極力、避けていただきたいと思います)
・サミット参加回数(今回含む)
・その他、ご要望、ご質問など

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覚醒スイング

2013年04月07日更新

お立ち台に上がったふたりのヒーローが、冷たい風の吹きつけたデーゲームのスタンドを熱くした。

「常にみんな声が出ていて、点が入りやすいムードができていたと思うし、みなさんの応援もすごく僕らにとって大きな存在なので、本当にありがとうございました」

4打数で2得点3安打1打点と1四球の活躍を見せた丸がファンにメッセージを送ったあと、マイクを向けられたマエケンが言った。

「チームの状況は苦しいですけど、ファンの皆さんはちょっと暗いです。明るく笑って球場に来てください!」

開幕第2戦で8回1失点の投球を見せながら“不発”に終わったマエケンは、東京ドームでも投げていた130キロ台中盤の高速スライダーを組み立ての中心に据えた。WBCを経験したことで「帰国してから腕が振れるし意外にスピードが出ている」真っ直ぐに変化を感じ取り、スライダーも同じ勢いで振り抜くことができた。

「一番の西岡さんはもちろん、どの打順も怖い」という阪神打線を相手に終わってみれば7回2安打1四球の無失点とほぼ完璧に抑え込んだ。真っ直ぐと高速スライダー、それにチェンジアップを低目に集め、外野に飛ばされたのは西岡の中前田、福留の左飛、コンラッドの中飛の3度だけだった。

6対1快勝の原動力がマエケンの投球内容にあったのは間違いない。だが、打線の援護がなければエースと言えども勝ちようがない。

「二番の丸がいっぱい出ていっぱい帰ってきてくれました!」。ヒーローインタビューの初っ端にマエケンはそう叫んだ。試合の流れを作ったのは8試合消化時点で早くも3度目の猛打賞獲得し、一、二回と立て続けにナイス走塁でホームに還ってきた丸だった。

打つだけではない。走っても守っても球界トップレベルの水準を目指す。丸の“イチロー化計画”は新井打撃コーチの就任と同時にスタートした。

「バッティングは力じゃない、スイングスピードとレベルスイング、そしてボールを見送る姿勢の中にいかに打ちにいく形を作るか、だ」。新井理論をナインに浸透させる作業は前年秋の日南キャンプでその第一歩を踏み出した。

新井コーチが真っ先にやったこと。それはひとりひとりのバットの形状、グリップの形、バランス、重さのチェックだった。

丸のバットはそれまで使用していたものより30グラム前後軽量化され、“スイングスピードの高速化”を可能にした。同時にこれまでダウンスイングをイメージして、構えた時に両肩のラインより高い位置に固定していたグリップを、同ラインのかなり下まで降ろした。

「打撃改造」には勇気がいる。だが丸には迷っている時間はなかった。2011年に初めて規定打席に到達して105安打を放ったのに2012年は70安打を放つのが精一杯だった。目の前に大きな壁があることは分かっていた。2000本安打の新井理論を吸収することで覚醒する自分に賭けた。

2月、再び日南に入るやいなや反復練習が始まった。「レベルスイング」への移行は簡単ではなかった。「まだまだ、自分のものにするには相当かかると思います」。キャンプ序盤は試行錯誤の連続だった。

それでもシート打撃や紅白戦が始まると、丸のバットから快音が響くようになった。グリップの位置が下がったことでスイングが以前と比べてずいぶんシンプルになった。肩の余分な力も抜けたように見えた。

オープン戦の時期になっても極端にバッティングの状態が悪くなるようなことはなくなった。「外の球をとらえることができている。精度をもっと高めたい。手ごたえは感じています」。テーマのひとつだった「確実性」が増してきた。

試合前、新井打撃コーチが上げるトスを打つ、というルーティンはマツダスタジアムでも遠征中でも3月いっぱい続けられた。最初は外角の球を強くショート頭上へ強く打ち返せるように丸から見て左45度の角度から、続いて新井コーチが丸の正面に入り、ネットの影から上げるトスをフルスイングした。

新井コーチには、かつてイチローの打撃スタイルの基本を、このトスバッティングで固めた実績と経験、もっと言えば信念がある。同じ道を歩むことで丸のバットの軌道はそれまでとはまったく違ったものになり始めた。地面と平行にバットのヘッドを移動させ、最後の大きなフォロースルーと同時に風を斬る音が聞えてきた。

オープン戦の時期にはもうひとつのテーマにも挑戦した。オープンスタンスから右足を上げて踏み込もうとすると、相手投手が「クイック」で崩しにかかってくるようになったからだ。

自分のタイミングで打とうとすれば上げた足を降ろした時には完全に差し込まれてしまう。そこで上げた右足を途中で早めに一度、地面と接触させ軽くステップして本来の踏み出し位置に右足を着地させる「二段ステップ」に打撃フォームをアレンジした。

守ること、走ることにおいてもキャンプからワンランク、ツーランク上を目指して丸はやってきた。打つだけではレギュラーにはなれない。同時並行であらゆる課題に取り組みながら丸は2013年シーズンを迎えることになった。

日南キャンプ終盤、丸や安部の屋内打撃練習を見守りながら新井コーチが話し始めた。

「よく少年野球の本などに体重を残して振りにいき、そこからもう一度体重移動などと書いてあるがそれは間違い。それではスウェーしてしまう。ステップして着地した時にピッチャーに向かっていく形ができていれば体重移動していてもOK、言い換えれば下半身は打ちにいく、しかし上半身は残すんです。そしてみんな試合で10の力で振ろうとするけど練習10なら試合は8ぐらいでいいんですよ」

新井理論の引き出しはおそらく無数にあるはずだ。打球音とマシンの油切れの音が一定のリズムで繰り返される現場で話はなおも続けられた。

「ヘッドがうまく使えないとバットが折れたりもするんですよ。そのためにはまずバットの握りから変えなくてはいけない選手もたくさんいる。そうやってヒットを重ねていく。うまくいけば280には届く。その先、いかにして300をクリアするのか?そこにはラッキーなヒットや内野安打も当然、必要になってくるんです」

話の最後に新井コーチ自らが口にした「打率3割」の目標に到達できる愛弟子は果たして…?かつて神戸の空の下、「前人未踏のシーズン200安打」を可能にした新井理論とイチローの振り子打法が紡いだ物語。その続編がこの広島でまさに今、始まろうとしている。

カープと広島を愛する人たちに贈る携帯サイトの決定版。テレビやラジオより速く、新聞より詳しく、雑誌より感動できるカープナインの365話物語。田辺一球責任編集。すでに7年以上、一日も休むことなく続くカープコラム「赤の魂」やカープ情報や新球場問題などを速報する「ニュース速報」他サイトと比較して一目瞭然の「試合速報」現場で集めた「ファーム情報」携帯サイト読者とメールのやりとりする中から新たなコミュニティーを創造する「コイの季節をあなたにも...」。5つのコンテンツで税込み178円です。なお、携帯サイトと当HPをリンクさせ、全国から集まったみなさんの声をカープと新球場の未来のために同携帯サイト上や当HP上、あるいはスポーツコミュニケーションズ・ウエストが発行する書籍内において掲載させていただくことがありますのであらかじめご了解ください。

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